バラの写真と色空間

 

上の2つの写真,全く同じに見えるでしょうか。それとも,色に違いがあるでしょうか。目の問題というよりも,表示環境によって,いずれであるか決まります。多分,iPhoneやiPad,MacBookで見ている人は1枚目の方が真ん中あたりがより明るい赤に見えているはずです。

これら2つの写真は同じバラを撮影した単一のRAWファイルからJPEGに出力したものですが,色域が異なります。1枚目はAdobe RGBとして,2枚目はsRGBとして出力したものです。sRGBはPCやウェブでよく使われる色空間ですが,目に見える色の範囲よりもだいぶ狭い範囲に限定されています。Adobe RGBはもっと広い範囲を表現できます。iPhone等Apple製品はDisplay P3というまた別の色空間に対応しており,これはやはりsRGBよりも広いものです。2枚目の写真はsRGBの色空間で表現できる範囲内に出力しているわけです。

画面で見る写真は,実は落ちてしまっている色があるということです。

色空間を説明したウェブサイトによくあるチャートを見ると,sRGBとAdobeRGBの違いは主に緑方向の広がりであるように見えますが,上のような赤いバラでも意外と違いが生じるようです。

私はAdobe RGBに99%対応のディスプレイを使っており,一眼レフで撮影する写真はRAW+JPEGで記録し,JPEGはAdobe RGBで保存するようにしています。ただし,JPEGに埋め込まれたカラープロファイルを適切に扱えるソフトウェアでないと色が全体的におかしくなるので(同じRGB値でも色空間の違いにより対応する色が異なるため),画像の共有先で広い色域を扱える確信がないときは,RAWからsRGBとして出力しています。ちなみにInstagramはJPEGのカラープロファイルを削っているそうなので,sRGB専用といえます。

sRGBより広い,より本物に近い色域を不自由なく扱えるよう,ソフトウェア・ハードウェア両面で進歩することを期待したいものです。

このブログの人気の投稿

『漢字文化事典』の項目を執筆しました

ブログ再開について

秋バラを撮りに